小説書いてみた

中学二年生の真白(ましろ)は、毎日の学校生活や人間関係にすっかり疲れ果てていた。
教室のざわめきも、自分の居場所がないような焦りも、すべてが息苦しくて、消えたいと本気で思っていた。
放課後、あてもなく駅のホームの端、普段は誰もいない一番奥のベンチに座り込んでいたときのことだ。 ふと足元を見ると、見たこともない古びた切符が落ちていた。
「えと、ま、、ほろ?」
拾い上げようとした瞬間、周囲の景色がぐにゃりと歪んだ。 電車の音が遠ざかり、気がつくと真白は、満天の星空がどこまでも広がる、静かなプラットフォームに立っていた。
「おっと、そこ危ないよ。落ちたら戻れない。」
気だるげで、でも心地よく響く声がして振り返ると、ホームの柱にもたれかかるようにして、一人の女性が立っていた。 ラフなパーカーに長い黒髪、耳には群青色の星のかけらみたいなピアスをつけている。年齢は二十代半ばくらいに見えるけれど、その纏う空気はどこか底知れない「神様」のそれだった。
「……誰?」
真白が身構えると、女性は肩をすくめて苦笑した。
「私? ここの管理を任されてる、まあ神様みたいなもんさ。そんなに怖がらなくていいよ」
「ここは……どこ?」
真白が震える声で聞く。
「『終点であり、起点でもある場所』かな。名前は『まほろば』。いろんなことに疲れ果てて、ポキッと心が折れかかった子が、たまに吸い寄せられてきちゃうんだよねぇ、ここには」
女性はポケットから蒼いラムネの容器を取り出し、一粒口に放り込むと、「食べる?」と真白に差し出した。真白が俯きがちに首を横に振ると、「そっか」と自分で美味しそうにポリポリと食べた。「遠慮?」真白はまた首を横に振る。「何か食べると、吐く時があるから。」「そっか」
「私、消えたかったの。もう頑張れないから」 真白は、ずっと胸につかえていた涙と一緒に、今まで誰にも言えなかった苦しみをぽつりぽつりと零し始めた。神様は遮ることなく、途中で「それは辛いわ。」「よく耐えたじゃん」と、相槌を打つように聞いてくれた。
全部話し終えて、真白がうつむくと、神様はポケットに手を入れたまま、やれやれといった風にため息をついた。 「よく耐えたね。誰も褒めてくれなくても、私が見てたからさ、よくここまで歩いてきたよ。……でもね、真白のその切符は『片道切符』じゃない。往復切符なんだよねぇ」
「往復……?」
「この宇宙には、真白にしか見つけられない『小さな光の欠片』がまだ転がってるんだよね。それを全部拾い集めるまでは、帰すわけにはいかないの」
神様が指先をパチンと鳴らすと、星空の中にいくつものスクリーンが浮かび上がった。 それは、これから真白が出会うかもしれない、小さな美しい瞬間の数々だった。
* 雨上がりの帰り道、水たまりに映る鮮やかな夕焼け。
* 思いがけず図書館の隅で見つけた、心から夢中になれる一冊の本。
* 悩んでいるときに、友達がくれた「ねえ、これ美味しいよ」という何気ないチョコレートの甘さ。
* 親の夫婦喧嘩から逃げ出した夜のベランダで見上げた、言葉を失うほど美しかった星の輝き。
「こういう景色や温もりはさ、真白が今ここで、いなくなったら、永遠に誰も見ることができないんだよ。真白の目を通してしか、輝けないものなんだからさ」
スクリーンの向こうの温かな光を見つめているうちに、真白の胸の奥にあった冷たい石のようなものが、少しずつ溶けていくような気がした。
「……私、まだ見てもいいの?」
「当たり前でしょ。時間はたっぷりあるんだからさ。さあ、もう一度向こう側へ戻ろっか」
神様が切符にそっと息を吹きかけると、柔らかな光が真白を包み込んだ。
「待って! あなたの名前は……?」
神様はふっと、何とも言えない蒼色の瞳を輝かせて言った。
「名前なんてないよ。ま、せつなって呼んでよ。……あ、忘れたときは、ポケットに手を入れてみな。ちゃんと息して、生きるんだよ」
ハッと気がつくと、真白は元の駅のベンチに座っていた。 夕焼けが空を橙色に染めていて、電車の音が響いている。現実が消えたわけではないし、明日からもきっと悩むことはある。
だけど、真白は自分のポケットにそっと手を当てた。少しだけ呼吸がしやすくなっている気がする。何を食べても吐きそうな気もしない。
「……とりあえず、今日はメロンパンでも買って帰ろっと」
真白は立ち上がり、夕暮れの街へ向かってゆっくりと歩き出した。その背中には、さっきまでなかった小さな光が、しっかりと寄り添っていた。
中学二年生の真白(ましろ)は、毎日の学校生活や人間関係にすっかり疲れ果てていた。
教室のざわめきも、自分の居場所がないような焦りも、すべてが息苦しくて、消えたいと本気で思っていた。
放課後、あてもなく駅のホームの端、普段は誰もいない一番奥のベンチに座り込んでいたときのことだ。 ふと足元を見ると、見たこともない古びた切符が落ちていた。
「えと、ま、、ほろ?」
拾い上げようとした瞬間、周囲の景色がぐにゃりと歪んだ。 電車の音が遠ざかり、気がつくと真白は、満天の星空がどこまでも広がる、静かなプラットフォームに立っていた。
「おっと、そこ危ないよ。落ちたら戻れない。」
気だるげで、でも心地よく響く声がして振り返ると、ホームの柱にもたれかかるようにして、一人の女性が立っていた。 ラフなパーカーに長い黒髪、耳には群青色の星のかけらみたいなピアスをつけている。年齢は二十代半ばくらいに見えるけれど、その纏う空気はどこか底知れない「神様」のそれだった。
「……誰?」
真白が身構えると、女性は肩をすくめて苦笑した。
「私? ここの管理を任されてる、まあ神様みたいなもんさ。そんなに怖がらなくていいよ」
「ここは……どこ?」
真白が震える声で聞く。
「『終点であり、起点でもある場所』かな。名前は『まほろば』。いろんなことに疲れ果てて、ポキッと心が折れかかった子が、たまに吸い寄せられてきちゃうんだよねぇ、ここには」
女性はポケットから蒼いラムネの容器を取り出し、一粒口に放り込むと、「食べる?」と真白に差し出した。真白が俯きがちに首を横に振ると、「そっか」と自分で美味しそうにポリポリと食べた。「遠慮?」真白はまた首を横に振る。「何か食べると、吐く時があるから。」「そっか」
「私、消えたかったの。もう頑張れないから」 真白は、ずっと胸につかえていた涙と一緒に、今まで誰にも言えなかった苦しみをぽつりぽつりと零し始めた。神様は遮ることなく、途中で「それは辛いわ。」「よく耐えたじゃん」と、相槌を打つように聞いてくれた。
全部話し終えて、真白がうつむくと、神様はポケットに手を入れたまま、やれやれといった風にため息をついた。 「よく耐えたね。誰も褒めてくれなくても、私が見てたからさ、よくここまで歩いてきたよ。……でもね、真白のその切符は『片道切符』じゃない。往復切符なんだよねぇ」
「往復……?」
「この宇宙には、真白にしか見つけられない『小さな光の欠片』がまだ転がってるんだよね。それを全部拾い集めるまでは、帰すわけにはいかないの」
神様が指先をパチンと鳴らすと、星空の中にいくつものスクリーンが浮かび上がった。 それは、これから真白が出会うかもしれない、小さな美しい瞬間の数々だった。
* 雨上がりの帰り道、水たまりに映る鮮やかな夕焼け。
* 思いがけず図書館の隅で見つけた、心から夢中になれる一冊の本。
* 悩んでいるときに、友達がくれた「ねえ、これ美味しいよ」という何気ないチョコレートの甘さ。
* 親の夫婦喧嘩から逃げ出した夜のベランダで見上げた、言葉を失うほど美しかった星の輝き。
「こういう景色や温もりはさ、真白が今ここで、いなくなったら、永遠に誰も見ることができないんだよ。真白の目を通してしか、輝けないものなんだからさ」
スクリーンの向こうの温かな光を見つめているうちに、真白の胸の奥にあった冷たい石のようなものが、少しずつ溶けていくような気がした。
「……私、まだ見てもいいの?」
「当たり前でしょ。時間はたっぷりあるんだからさ。さあ、もう一度向こう側へ戻ろっか」
神様が切符にそっと息を吹きかけると、柔らかな光が真白を包み込んだ。
「待って! あなたの名前は……?」
神様はふっと、何とも言えない蒼色の瞳を輝かせて言った。
「名前なんてないよ。ま、せつなって呼んでよ。……あ、忘れたときは、ポケットに手を入れてみな。ちゃんと息して、生きるんだよ」
ハッと気がつくと、真白は元の駅のベンチに座っていた。 夕焼けが空を橙色に染めていて、電車の音が響いている。現実が消えたわけではないし、明日からもきっと悩むことはある。
だけど、真白は自分のポケットにそっと手を当てた。少しだけ呼吸がしやすくなっている気がする。何を食べても吐きそうな気もしない。
「……とりあえず、今日はメロンパンでも買って帰ろっと」
真白は立ち上がり、夕暮れの街へ向かってゆっくりと歩き出した。その背中には、さっきまでなかった小さな光が、しっかりと寄り添っていた。

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