世界一大きなクジラと、世界一小さな深海魚世界のどこかにある、とても深くて青い海のお話です。そこには、世界一大きな体を持つシロナガスクジラの「グラン」が住んでいました。グランの体は、学校のプールが3つ並んでも足りないくらい大きく、ひと鳴きすれば、海の終わりまでその声が届くほどでした。しかし、グランはいつも寂しそうにしていました。なぜなら、あまりにも体が大きすぎて、他の魚たちが怖がって逃げてしまうからです。ある日、グランが海の底の暗い場所を泳いでいると、お腹のあたりが「くすぐったい」ことに気づきました。「だれだい? 私のそばにいるのは」グランが大きな声で問いかけると、海の底から消えそうなほど小さな声が返ってきました。「ボクだよ。世界一小さな深海魚の『ピコ』さ」ピコは、人間の小指の爪よりも小さな魚でした。あまりに小さく、体が透明だったため、誰からも気づかれたことがありません。「おじさん、体があまりに広すぎて、ボク、迷子になっちゃったんだ」ピコは、グランの大きなヒレのシワの間で、ちょこちょこと泳いでいました。グランは嬉しくなりました。いつもみんなに逃げられる自分が、初めて誰かの役に立てた気がしたからです。「よし、ピコ。私の背中に乗りなさい。世界一の景色を見せてあげよう」こうして、世界一大きなクジラと、世界一小さな深海魚の、不思議なふたり旅が始まりました。グランはピコを乗せて、世界中の海を巡りました。南の海では、世界一カラフルなサンゴの森を抜けました。北の海では、世界一冷たい氷山のすぐそばを通り、夜空に揺れるオーロラを一緒に見上げました。ピコは小さな目を輝かせ、「世界って、こんなに広くて綺麗なんだね!」と大喜びしました。ある時、ふたりは大きな海底火山の近くを通りかかりました。その時です。ゴゴゴゴ……と激しい音がして、火山が突然、大爆発を起こしたのです。熱い泥水と岩が、ふたりに向かって降ってきました。「危ない!」グランはとっさに大きなヒレを広げ、ピコを包み込みました。グランの頑丈な皮膚のおかげでピコは無事でしたが、爆発の衝撃で、海底の狭い岩の隙間にふたりとも閉じ込められてしまいました。グランの体は大きすぎます。岩の隙間から抜け出そうとしても、体が引っかかって全く動きません。「困ったな……私の力でも、この岩は動かせない。このままでは息が苦しくなってしまう」グランが諦めかけたその時、ピコが言いました。「グランおじさん、ボクの番だ。ボクは世界一小さいから、この岩の隙間を通り抜けられるよ!」ピコは、グランのヒレから飛び出すと、岩と岩のわずかな隙間にスルスルと入り込んでいきました。そして、海の向こうにいるイルカの群れを見つけると、全力でヒレを振って、光るプランクトンを集めて合図を送りました。ピコの小さな、でも必死な合図に気づいたイルカたちが、何百匹も集まってきました。イルカたちはみんなで力を合わせ、グランを閉じ込めていた岩を少しずつ動かしてくれたのです。ついに岩が外れ、グランは広い海へと飛び出すことができました。その頭の上には、誇らしげに胸を張る小さなピコがいました。「ありがとう、ピコ。お前は世界一小さいけれど、世界一勇敢な魚だ」グランが言うと、ピコは照れくさそうに笑いました。「グランおじさんこそ、世界一優しいクジラだよ」それから、ふたりは「世界一の名コンビ」として、今も広い海を旅しています。どんなに大きなトラブルも、どんなに小さな隙間の秘密も、このふたりにかかれば解決できないことはないのです。v
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